ヘンダーソン島

Henderson Island

  • イギリス
  • 登録年:1988年
  • 登録基準:自然遺産(vii)(x)
  • 資産面積:3,700ha
世界遺産「ヘンダーソン島」、ノーザン・ビーチ
世界遺産「ヘンダーソン島」、ノーザン・ビーチ

■世界遺産概要

ヘンダーソン島は太平洋東南部で孤立したピトケアン諸島最大の島で、隔絶された環境から数多くの固有種を持つ他に類を見ないユニークな生態系を育んでいる。

○資産の歴史と内容

ヘンダーソン島はピトケアン島、デュシー島、オエノ島とともに太平洋南東部に浮かぶピトケアン諸島を構成する無人島で、大きさは10×9kmほどと諸島の中では最大を誇る。島を除くと大きな陸地は周囲5,000kmほど存在せず、環境的に隔絶されている。サンゴ礁が隆起してできた隆起環礁の島で、このため海岸は切り立った崖になっており、中央部分は盆地で森が広がっている。

遺跡などからこの島には12世紀頃からポリネシアの人々が暮らしていたと考えられているが、15世紀には姿を消したようだ。1606年にポルトガルのペドロ・フェルナンデス・デ・ケイロスが欧米人としてはじめてこの島を発見。1819年にはイギリス東インド会社のジェームズ・ヘンダーソンが降り立ち、ヘンダーソン島と名づけて定着した。

島は小さく、淡水がほとんど存在しない。土壌が痩せている割に生物多様性に富んでおり、57種の維管束植物(維管束を持つシダ植物や種子植物)や24種の鳥類をはじめ、トカゲやヤモリ、ウミガメなどの爬虫類やカタツムリなどの腹足類、昆虫などが生息している。固有種の割合が非常に高く、ヘンダーソンフルーツハト、ヘンダーソンロリキート、ヘンダーソンアシムシクイ、ヘンダーソンクリークの陸鳥4種はすべて固有種だ。他にも維管束植物の10種、腹足類と昆虫に至っては1/3が固有種となっている。といっても島の全面的な調査は行われておらず、まだ相当数の固有種が未発見のままであると考えられている。また、絶滅危惧種も少なくなく、海鳥であるヘンダーソンミズナギドリはIUCN(国際自然保護連合)レッドリストの危機種(EN)で、4種の陸鳥もすべて危急種(VU)に登録されている。

■構成資産

○ヘンダーソン島

■顕著な普遍的価値

本遺産は登録基準(viii)「地球史的に重要な地質や地形」でも推薦されたが認められなかった。

○登録基準(vii)=類まれな自然美

手付かずの石灰岩の島としては世界最大の大きさを誇り、白い砂浜や白い崖、豊かな植生などユニークで傑出した自然美を見せる。隆起環礁の顕著な例でもあり、豊かな森林には数多くの海鳥が生息している。同種の島は世界に20ほどしかないが、これほど無傷な島は存在しない。

○登録基準(x)=生物多様性に富み絶滅危惧種を有する地域

隔絶されたサンゴ環礁であり一般の種は乏しいものの、飛べない鳥であるヘンダーソンクリークに代表される陸鳥4種はいずれも固有種である。他の少なくとも4種の固有種と1種の在来種は人間の侵入によって絶滅したと考えられている。現在、この島は絶滅危惧種であるヘンダーソンミズナギドリの唯一の繁殖地であり、少なくとも10種の海鳥の重要な繁殖地である。植物相も乏しいが、57種の固有の維管束植物が記録されており、6種の固有種、3種の固有亜種が含まれている。島は包括的な調査を受けておらず、未確認の固有種が生息する可能性は高い。たとえば無脊椎動物についてはほとんど知られていないが、これまでに採取された昆虫と腹足類の1/3は固有種である。

■完全性

ヘンダーソン島は12~15世紀の間にポリネシア人によって植民が進められたが、それ以来、島には人が居住していない。その遠隔性とアクセスの難しさのためほぼ手付かずの生態系が維持されており、計り知れない価値がある。法的保護と管理計画の強化・実施は求められるが、完全性はおおむね満たされている。侵略的外来種は資産に対する最大の脅威となりえ、数世紀前に侵入したポリネシアネズミは鳥類の個体数を激減させたことが示されている。漁師や観光客の上陸に対して島は無防備で、資産の最大の脅威のひとつとなっている。また近年、太平洋各地から数多くのプラスチックごみやマイクロ・プラスチック(微細なプラスチック粒子)が上陸、あるいは海洋を汚染しており、大きな問題となっている。

■関連サイト

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