世界遺産リストについて

エジプトの世界遺産「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」、アブ・シンベル大神殿
エジプトの世界遺産「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」、アブ・シンベル大神殿。世界遺産の活動はこの遺跡の救済キャンペーンからはじまった

世界遺産リストの状況は以下となっています。

 

○世界遺産の数

  • 世界遺産条約締約国……196か国
  • 世界遺産総数……1,223件
  • 文化遺産……952件
  • 自然遺産……231件
  • 複合遺産……40件
  • 危機遺産……56件
  • 登録を抹消された元世界遺産……3件

登録を抹消された「元」世界遺産は以下です。

 

○抹消された元世界遺産

  • アラビアオリックスの保護区(オマーン、 1994年登録、2007年抹消、自然遺産(x))
  • ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ、2004年登録、2009年抹消、文化遺産(ii)(iii)(iv)(v))
  • 海商都市リヴァプール(イギリス、2004年登録、2021年抹消、文化遺産(ii)(iii)(iv))

■掲載データについて

各世界遺産について、ユネスコ(UNESCO=国際連合教育科学文化機関)公式サイト掲載の資料やリンク先の公式サイトなどを参考に、以下を掲載しています。

ただし、物件によって不明なもの、ないものも存在します。

  • 所属国
  • 登録年・範囲変更年
  • 登録基準
  • 資産面積
  • バッファー・ゾーン面積
  • IUCN保護地域管理カテゴリー(自然遺産のみ)
  • 世界遺産概要
  • 主要構成資産
  • 登録基準
  • 完全性
  • 真正性
  • 関連サイト

世界遺産とは、「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」、すなわち世界遺産条約で定められた「世界遺産リスト(世界遺産一覧表)」に掲載された遺産のことを示します。

世界遺産条約は、国家・文化・民族・宗教等の枠組みを越え、人類全体にとって現在および将来世代に共通した重要性を持つ価値、すなわち「顕著な普遍的価値 "Outstanding Universal Value"」を持つ文化遺産や自然遺産を恒久的に守ることを目的とした条約です。

この条約は1972年に採択され、1978年から世界遺産リストの制作がはじまりました。

 

顕著な普遍的価値の評価基準が「登録基準 "Criteria"」で、世界遺産を目指す物件は10項目からなる登録基準の少なくとも1項目は満たさなければなりません。

 

○登録基準

  • (i) 人類の創造的な才能を表現する傑作であるもの
  • (ii) 一定の期間、または世界のある文化圏において、建築・技術・記念碑・街並み・景観デザインの発展において、人類の価値の重要な交流を示しているもの
  • (iii) 現存する、またはすでに消滅した文化的伝統や文明に関する唯一の、あるいはまれな証拠を示しているもの
  • (iv) 人類の歴史の重要な段階を示す建築物、建築様式、技術集合体、または景観の顕著な例といえるもの
  • (v) ある文化(ある複数の文化)や人類の環境的相互作用を特徴づける人類の伝統的集落や土地や海洋利用の顕著な例であるもの。特に、回復が困難で、存続が危うい状態にあるもの
  • (vi) 顕著で普遍的な価値を有する出来事や現在存続する伝統で、思想・信仰・芸術作品・あるいは文学作品と直接に、または実質的に関連があるもの(本基準は他の基準と関連して適用されるべき基準と考えられている)
  • (vii) 類まれな自然の美や美的要素を有した自然現象、または地域を含むもの
  • (viii) 生命の記録、進行中の地形発達の重要な地質学的過程、または重要な地形学的・自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を示す顕著な例であるもの
  • (ix) 陸上・淡水・沿岸・海洋生態系・動植物群集の進化や発展において、進行中の重要な生態学的・生物学的過程を示す顕著な例であるもの
  • (x) 学術上・保全上の観点から顕著な普遍的価値を有し、絶滅の恐れがある種が生息しているなど、生物の多様性保全の観点からもっとも重要な自然の生息地を含むもの

世界遺産は登録基準の満たし方で次の3種に区分されます。

ただし、複合遺産は世界遺産条約で定義されておらず、「文化遺産の価値と自然遺産の価値を併せ持つ遺産」ということになります。

 

○世界遺産の種類

  • 文化遺産 "Cultural Heritage":登録基準(i)~(vi)を1項目以上満たす物件
  • 自然遺産 "Natural Heritage":登録基準(vii)~(x)を1項目以上満たす物件
  • 複合遺産 "Mixed Heritage":登録基準(i)~(vi)と登録基準(vii)~(x)の両者をそれぞれ1項目以上ずつ満たす物件

それぞれの世界遺産には次の2つの領域があります。

バッファー・ゾーンの設定は強く要請されていますが、保有しない物件も存在します。

 

○世界遺産の領域

  • 資産 "Property":世界遺産登録範囲。プロパティ。コア・エリア
  • バッファー・ゾーン "Buffer Zone":資産と周辺のバッファーとなる緩衝地帯

資産は顕著な普遍的価値を構成する要素をすべて備えており、保護に必要な十分な広さを持ち、法律の保護下になければなりません。

これを「完全性 "Integrity"」といいます。

たとえば生態系を登録理由にしている自然遺産の場合、法律で保護されているのはもちろんですが、資産のみで生態系が維持できる必要があります。

 

また文化遺産の場合、資産の形状や意匠・素材・工法・用途等がそれぞれの文化的背景の独自性や伝統を正しく継承していなければなりません。

これを「真正性 "Authenticity"」といいます。

ですから建物を現在の工法や素材を使って修復したり、「こんな形だったのだろう」と推測で復元することは認められません。

 

もうひとつ、重要な概念が「代表性 "representativeness"」です。

世界遺産は同種の自然や文化の遺産を代表するものであり、最高の1件が登録されなければなりません。

「姫路城」が世界遺産リストに登録されてから彦根城をはじめとする他の城が登録されにくくなったといわれますが、日本の中世の平城は姫路城に代表されているため他の顕著な普遍的価値を見出す必要があるためです。

 

世界遺産の資産は1件であるとは限らず、複数の資産を持つこともあります。

こうした資産群は「構成資産(シリアル・プロパティーズ)」と呼ばれ、基本的にそれぞれの構成資産が資産とバッファー・ゾーンを持っています(バッファー・ゾーンはない場合もあります)。

顕著な普遍的価値については個々の構成資産が持つ必要はなく、その遺産全体で価値があればよいことになっています。

 

複数の構成資産を有する世界遺産はシリアル・ノミネーションによる遺産ということで「シリアル・サイト "Serial Site"」や「シリアル・ノミネーテッド・サイト "Serial Nominated Site"」、複数の国に構成資産を有する場合は「(シリアル・)トランスナショナル・サイト "(Serial) Transnational Site"」、資産が国をまたがって連続している場合は「トランスバウンダリー・サイト "Transboundary Site"」と呼ばれます。

これらは資産に注目して、「シリアル・トランスナショナル・プロパティーズ」「トランスバウンダリー・プロパティ」などとも呼ばれます。

 

自然遺産について、IUCN(国際自然保護連合)の保護地域管理カテゴリーは以下のようになっています。

 

IUCN保護地域管理カテゴリー

  • カテゴリーI:Ia=厳正保護地域、Ib=原生自然地域。学術研究や原生自然の保護を主目的として管理される保護地域
  • カテゴリーII :国立公園。生態系の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
  • カテゴリーIII:天然記念物。特別な自然現象の保護を主目的として管理される地域
  • カテゴリーIV:種と生息地管理地域。管理を加えることによる保全を主目的として管理される地域
  • カテゴリーV:景観保護地域。景観の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
  • カテゴリーVI:資源保護地域。自然の生態系の持続可能利用を主目的として管理される地域

IUCNのレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)のカテゴリーは以下となっています。

日本の環境省も独自のレッドリストを作成していますが、IUCNのレッドリストを参考にしています。

IUCNおよびIUCN日本委員会が使用している名称で、環境省の名称が異なる場合は括弧内に記しています。

  • EX (Extinct):絶滅
  • EW (Extinct in the Wild):野生絶滅
  • CR (Critically Endangered):深刻な危機(絶滅危惧IA類
  • EN (Endangered):危機(絶滅危惧IB類)
  • VU (Vulnerable):危急(絶滅危惧II類)
  • NT (Near Threatened):準絶滅危惧
  • LC (Least Concern):低懸念
  • DD (Data Deficient):データ不足(情報不足)
  • NE (Not Evaluated):未評価

世界遺産条約を批准していて世界遺産を保有していない国は以下となっています。

 

○世界遺産非保有の条約締約国(196か国中28か国)

-ヨーロッパ

・モナコ

-アジア

クウェート

東ティモール

ブータン

ブルネイ

モルディブ

-オセアニア・大洋州

クック諸島

サモア

・ツバル

トンガ

ニウエ

・ナウル

-北アメリカ

グレナダ

セントビンセント及びグレナディーン諸島

トリニダード・トバゴ

バハマ

-南アメリカ 

 ガイアナ

-アフリカ

・エスワティニ

・ギニアビサウ

コモロ連合

サントメ・プリンシペ

シエラレオネ

ジブチ

赤道ギニア

・ソマリア

南スーダン

ブルンジ

リベリア

 

[関連サイト]